xlab’s diary あやしい時代

感じたことを、感じたままに

「うつろ舟」(澁澤龍彦)を読む ~エロティックでグロテスク 澁澤の「魔術」に酔いしれる~

うつろ舟―渋澤龍彦コレクション   河出文庫

 

澁澤龍彦は、還暦の声を聴く前に亡くなった。

だけど、彼の場合、それで良かったように思えるんです。

 

彼が信奉するものは『ダンディズム』

老いさらばえた姿は、彼には似合わないもの。

 

 

というのは表向き。。。

 

 

彼の人生そのものは決して順風満帆と呼べるようなものではありません。

大学入学時に二浪し、大学卒業時には新聞社・出版社の就職試験に全敗。

 

仕方なく大学院に進むも、胸を病み、正業に就くこともできない有様。

澁澤栄一らを輩出した澁澤一族の本家筋であったにもかかわらず、銀行員だった父の死後、文名が上がるまで糊口をしのぐ日々を余儀なくされる。

 

そもそも人間的に問題があって、最初の妻には四度にわたる妊娠中絶を強要し、挙句に妾との同衾まで要求する始末。

それどころか、妻の出奔により離婚した際には、別れた妻のもとに結婚当時の写真をことごとく鋏で切断したものを送り届けるという、あきれ果てた女々しさ。

 

要するに、生来の『ダメな男』

彼が「ダンディズム」云々を大仰に掲げるほど、コンプレックスの裏返しにしか思えません。

 

しかし・・・である。

どうしようもない人間に、救い難いと思えるほどの「ダメな男」に、天が他人を驚愕せしめる文才を与えたとしたら・・・

 

答えは、言わずもがな。

信者ともいうべき多数の信奉者を生み出すことになるんです。

 

 

さてさて。。。

 

 

「うつろ舟」

晩年に手掛けた短編集の表題作。

 

収められている8編は、いずれも珠玉と形容するに相応しい作品。

その中でも、澁澤らしさが特に溢れている、この作品が好き。

 

常陸の国はらどまりの浜に流れついたガラス張りの〈うつろ舟〉。

 そのなかには、金髪碧眼の若い女人が、一個の筥とともに閉じ込められていた。

 そして繰りひろげられる少年との夢幻的な交歓。

 古典に題材をとりながらもそれを自由自在に組み換え、

 さらに美しくも妖しい一つの〈球体幻想〉として結晶させた表題作』

 

作品紹介には、このように記載されています。

まあ・・・

この作品の場合、筋書がどうだのと語るのは野暮というものでしょう。

だって・・・

「幻想」というより「幻惑」の世界なんですもの。

 

 

澁澤の作品はグロテスクに過ぎる、との意見もあろうかと思います。 

でも、アザゼルからしてみれば、現世の方が、余程グロテスクだと思えてきます。

 

 

あと・・・

個人的な見解をお許しいただければ、澁澤の作品をより深く味わいたいのなら、できるだけご年齢を経た方が良いんじゃないかしら。

澁澤の持ち味は、一種のノスタルジアが「幻惑」あるいは「幻視」の根幹を成していると思うから。

 

アザゼル自身、10年後、あらためて読んでみれば、今は見えていなかったものが見えてくるようにも思えてきます。

無論、そんなことは所詮は夢幻の領域のお話でしかないんですけれど。

 

 

幻惑の世界がお好きならば、この本を手に取られることをお勧めいたします。

もし未読でしたら、お気に召すものと存じまするぅ~