xlab’s diary あやしい時代

感じたことを、感じたままに

No country for old men「老いていく我に、棲むべきところ無し」 ~「Sailing to Byzantium」の全文を読んでいないと、映画「ノーカントリー」の意味は半分も分からない・・・~

老人に安住の地など、どこにもありはしない

若者どもは、儚き性の喜びに酔いしれるのみ 

命短き鳥たちさえも木々の間から歌を奏でる

川には鮭が、海には鯖が、溢れる無数の群れ

魚、獣、そして鳥たちさえも、ひと夏もの間

交尾し、生命を誕生させ、死ぬ者を賛美する

刹那の夢と官能の音楽、ただ浅慮に身を委ね

朽ちることのない知性を省みる者などいない

                (アザゼル訳)

 

この有名な詩の書き出しは、殊の外、有名。

That is no country for old men.

あのコーエン兄弟の「ノーカントリー」(邦題)のタイトルは、この詩を引用したもの。

 

 

ノーカントリー (字幕版)

 

 

ちなみに、アザゼルコーエン兄弟の作品・・・基本的には好き。

その理由は、ヒトを殺す時の描写において、感傷めいた安っぽいヒューマニズムを排除しているから。

 

 

殺すのなら、サッサと殺せ!

下らぬ感情など不要、ただ引き金を引け!

 

 

・・・って感じの作品が好き。

っていうか、死を連想させないような作品、好きじゃないんです。

スプラッター系は大嫌い!

 でも、オカルトとか精神異常とか大好き!)

 

 

 

さてさて。。。

 

 

 

近年は映画作品のタイトルで知られているからなのか・・・

この詩の第一節、つまり、上にある和訳に相当する部分しか取り上げていないケースが少なくありません。

 

 

この詩は、全部で4つの節から構成されています。

それなのに、あたかも第1節が詩の全文であるかのように理解しちゃうと、あの映画の意味は半分も理解できないんじゃないかしら。

 

 

この詩に登場してくるビザンティウムというのは、いうまでもなく東ローマ帝国の首都(新ローマ / コンスタンティノーポリ)のこと。

例えば、10世紀ごろのキリスト教徒にとって、それはそれは目を見張る「聖なる都」だったんです。

(当時、ヨーロッパ大陸においてダントツの人口を誇った大都市であると同時に、歴史的、宗教的、文化的な観点でも、他都市を圧倒。)

 

 

いうまでもなく、観光名所が多い(※本当に多いんですよ!)ビザンティウムに観光に行きたいなぁ~

などと、不惑を超えたお一人様女子の戯言のようなことを、ダラダラと詩にしたわけじゃございません。

 

 

ノーベル文学賞にも輝いた、世界的詩人のイェイツさん。

何と還暦を越えてからも、若い頃に別れちゃった元カノが忘れられず・・・

別の女を嫁に迎えてからも、一人悶々とした夜を過ごしたそうな (;^_^A

 

 

だから・・・

欲望だらけの汚れた場所を離れ、「聖なる都」に出向き

 

『欲情まみれで魂が汚れ切ってしまった私を

 老いをも超克した存在へと作り変えてくれ』

 

と詠ったわけなんです。

 

 

アザゼルは20代だけど・・・

老いる」ことは恐怖以外の何物でもございません。

若い頃には想像すらできないまでに老いた私・・・

もう吐き気すら覚えます。

 

 

恐る恐る鏡を覗けば・・・

そこに居るのは

深く刻まれたシワが顔中に走り

皮膚という皮膚がダラしなくたるみ切り

体中に老人班という名の大小の花が咲いた

私・・・

そんな私を人目に曝け出し続けなければならないなんて・・・

 

 

惨めだわ・・・

 とても耐えられない・・・

  こんな自分が哀れ過ぎる・・・

 

 

そうよね。

老いる」って

「生きる」ことを選択した者に下された天罰だもの。

 

 

「生きる」ということを拒否できず

また、次の日の朝を迎えてしまった

 

 

そんな者には、容赦なく「老いる」という罰が下される。

だって、「生きる」ことは原罪を背負い続けることなんだもの、

 

 

 

で。。。

 

 

 

第2節は

「聖なる都に行き、欲望まみれの者たちとは縁を切る」

第3節は

「ことほど左様に情念まみれの私を、永遠の藝術作品へと作り変えよ」

という内容。

 

 

最終節の書き出しは

Once out of nature I shall never take
My bodily form from any natural thing

敢えて訳せば

ひとたび自然の摂理を超えたなら

もう二度と現世の姿には戻るまい

 

 

ノーカントリー」の保安官さんの言葉・行動・選択を意味を考えるうえで

この詩の全文を読んでおくことは必須

アザゼルは、そう思います。