xlab’s diary あやしい時代

感じたことを、感じたままに

「現代暴力論」(栗原康)を読む ~イマドキのアナーキーについて コレは、政治学の作品としてではなく、あくまでコラムあるいは人文系の作品として読むべきモノ~

えっと。。。

 

イマドキのアナーキーって、何て言うべきなのかしら・・・

社会から乖離した机上の空論を並べる、そんな逝っちゃっているヒトって感じしか受けなかったんです。

 

で。。。

 

今回取り上げるのが、そんな机上の空論というより、著者のやりきれない想いを紙面に叩きつけた作品。

ちなみに・・・

著者自身、任期付きの非常勤大学講師(現在、5年を超えて雇ってしまうと、法律上、無任期にせざるを得ないので、ごくごく僅かな例外を除いて雇止めとなる)という、宙ぶらりんの立場にあって、

 おカネは無い

 借金(奨学金の未返済分が600万円以上)はある

 将来が全然見えない

という、自分が置かれた状況に、ありったけの想いを込めて異を唱えるスタンスで書く作品が多いんです。

 

さてさて。。。

 

この作品、ある意味で、著者の自爆覚悟の作品。

アナーキズム、要するに政治学っぽい作品だと思って手にとってはいけませんぞ。

 

まあ、社会の権力・経済体制に対して

「俺はゼッテー認めないからなっ!!」

って感じのコラム、敢えて良く言えば人文系の作品、悪く言えば将来が見えない若年層の与太話だと思って読むのが「吉」

 

でね。。。

 

そうは言っても、政治学を専攻する者である著者は、(イマドキどれだけの需要があるのかは知らないけれど、大逆事件で官憲に殺された)大杉栄の思想を軸として、議論を展開するのです。

人間は「生きる」ことを選択するが故に「暴力」的にならざるを得ない・・・そんな感じかな。

 

アナーキズムにおいて憎むべき「国家」の統制が国内での秩序と経済の安定化を最優先した様を、反原発デモに参加する過程で目にした彼は、「国家が暴力を独占的に行使する」事態は絶対に容認してはならないという。

しかも、問題をはらんでいるのは、決して権力者の側だけではないとも指摘するんです。

 

当初の反原発デモは、統制めいたものもなく、解放感を直に感じられた。

それなのに、1年もすれと、デモ側が自主規制を行い自らデモ参加者を統制し始めたと指摘するわけ。

 

ことほど左様に「統制」された社会構造、あるいは社会構造を支える思想のあり方に、著者は吐き気すらを覚えるようなんです。

大杉栄がいうように「生きることは暴力を振るうこと」という思想を信条とする著者は、かような構造・思想こそが人間を人間足らしめぬ「悪」の根源であると認識する。

 

「ただダラダラと生きること」は、我が国では許されず、待っているのは不自由な生だけ。

「生き延びる」ことだけがクローズアップされ、「生きる」コトの意味を忘失かのような有様に強い義憤を唱える。

 

だからこそ、彼は己の思想の拠り所である政治学の思想を縦横に動員することで理論的武装を行おうとするんですよねぇ~

第1章の「国家の暴力」で「国家論」とそれに反する「革命論」を解説する理由は、そこにあるんです。

 

ただ残念なコトは、現代日本においてアナーキズムに基づく革命論をいくら唱えようとも、社会一般(ココでは「大衆」と置き換えても良い)には一向に響こうとしない点。

著者の持ち味が、このような社会から乖離した「空回り」あるいは「独り相撲」であることには失笑を禁じ得ないし。

 

今や「国家」が独占するに至った「絶対的な暴力」による人民の従属ぶりを指摘しようとも、果たしてどれだけの共感を生むのか、甚だ疑問。

むしろ、著者の独特なリズムを持った文章形態の方が興味を引くぐらい。

 

アナーキズムに限らず反体制派のよくやる手段、「家族」という最小単位の社会基盤の解体に、わざわざ章を立てて説明していたのには、またか・・・という感じのデジャブに襲われたりも。

家庭などは不要だと叫んだところで、家庭すら築けな経済的弱者の弱弱しい雄叫びにしか聞こえないのではないのかしら(笑)

 

そして話は、やはりバクーニンの民衆蜂起の話へと流れる。

いい加減、バクーニンの国家廃絶主義という呪縛から解放されてみてはどうなのだろう。

 

資本主義が人間を物扱いにして自己犠牲を強いることによって成立するシステムであるという指摘も、もう読み飽きたなぁ~

「暴力=生きたいという思い」

という等式が成立するように、万人のあばれる力を解放せよと唱えられても、心地良い環境を敢えて捨てる動機とはなり得ないだろうし。

 

この本は、ハッキリ言ってしまえば経済的あるいは社会的弱者の与太話。

しかし、そんな弱者が精一杯の理論武装という鎧を着て

「なんもかんも、ブッ潰れちまえっ!!」

と叫ぶ姿に、一服の清涼感を覚える方もいらっしゃるのではないかしら。

 

いろんな意味で

「元気があるって素晴らしいわね」

と無邪気になれる点は評価しておきたいと思いますぞ。