xlab’s diary あやしい時代

感じたことを、感じたままに

黙示の書と終末思想(その2)

「ダニエル書」では、終末を暗喩する幻影が、主人公ダニエルの眼前に何度も現る。

それらの幻影は、かつて世界(といってもユダヤの地を中心に考えた周辺世界という意味ではあるが)に君臨した複数の帝国の興亡を表している。

 

「ダニエル書」では、暗喩された幻影を主人公が何を意味しているのか理解できないので、大天使が逐一説明してくれるという、とても親切な設定になっている。

神がみせる幻影の意味は人間には理解し得ないというわけである。

 

勘の良い方なら、もうお分かりのとおり、何だか訳の分からないことを都合良く解釈するのは、オカルト系あるいはスピチュアル系の人間が多用する芸当。

神だの天使だのを適当にちりばめて都合良く解釈すれば、原文は何を言っているのかサッパリ分からない「ノストラダムスの予言」も的中率100%の驚異的な予言書に仕立て上げられる。

 

さて、大天使(の名を借りた著者たち)は、数々の幻影の意味するものの意味をこう説明する。

歴史順に登場する帝国を暗喩しているのだと。

 

挙句に、それらの帝国(計4つ)の滅亡後、神が支配する常世の園が出現するというのである。

もちろん、大ハズレである。

 

現在のイスラエル周辺を支配する大帝国は、セレウコス朝シリアの滅亡後も、数々登場する。

4つどころの数ではない。

 

紛争が絶え間なく続くイスラエルが神の国というのなら、質の悪い冗談でしかないだろう。

神も皮肉を心得ていると評価すべきかもしれない。

 

ちなみに、すでに大ハズレであることは述べたが、幻影に登場する獣について簡単に説明しておく。

第1の獣 : 鷲の翼が生えている、獅子のような怪物

       → バビロニア帝国・・・らしい

第2の獣 : 寝そべりながら3本の肋骨を咥えている、熊のような怪物

       → メディア王国・・・らしい

第3の獣 : 鳥の翼を4枚持ち、頭部も4つある、豹のような怪物

       → ペルシア帝国・・・らしい

第4の獣 : 10本の角を持つ、最強・最悪の獣

       → ギリシア(アレキサンダー帝国および後継者らの帝国)・・・らしい

で・・・こんな子供じみた話をするために、わざわざ大天使(ガブリエル)が登場するのである。

どれだけ暇なんだろう、大天使って奴は。

 

ちなみに「ダニエル書」によれば、ユダヤ教徒を大弾圧したセレウコス朝のアンティオコス4世の治世でギリシア支配も終焉を迎え、神の国が出現することになっていた・・・のだが、歴史は無情にもギリシアよりも遥かに強大なローマ帝国によるユダヤ支配へと移行していくのである。

預言書(予言書ではない!)など、所詮はこの程度の眉唾物でしかない。

 

しかし、これを預言書ではなく、被支配層による抵抗文学とみれば、結構、面白く読めるのである。

一神教の根源となるアブラハムの宗教の聖典旧約聖書も、宗教書としてみれば唯のオカルトではあるのだが、民族の叙事詩としてみれば、非常に優れた書物といえようか。

 

ところで。。。

 

「ダニエル書」が示した終末思想は、最初期のものであるが、すでにメシアの降誕、最後の審判といった、宗教上、非常に重要なメタファーが組み込まれている。

しかも、興味深いのが「神の玉座」について、やたらと詳しく解説していることだ。

 

で、神は自らの手で、ユダヤ教徒を大弾圧したギリシアを象徴する第四の獣を地獄の業火の中に投げ入れて殺すのである。

剣(軍事力)では到底敵わないので、文字(しかも密かに)で恨みを晴らしてカタルシスを自らに与えるという、超気持ちの悪いマスターベーションを行っていると言い換えることもできる。

 

「ダニエル書」が書かれた同時期に起きたマカバイの反乱(マカバイ記を参照)の方が、よほど雄々しい。

「ダニエル書」を編纂した集団の行為は、いじめられっ子が自分の日記の中で、いじめっ子をこれでもかと叩きのめし、憤懣やるかたない自分のココロを僅かでも癒そうとするのと大差ないのである。


し・か・も、最後のギリシア系の帝国が滅びた後、救世主が現れ、永遠の神の国が訪れるというのだから、宗教の原動力として最も強力なエネルギーは「恨み」であることが容易に理解できよう。

もっとも・・・「救いを求める」エネルギーよりも、「恨みを晴らす」エネルギーの方が遥かに強力であることは、海峡の向こうの国を眺めれば、容易に理解できるのは、いささか片腹痛い気もしないではない。


あと。。。

 

「ダニエル書」の重要な鍵となる考え方の一つに、死者の復活がある。

ここには天国と地獄の概念が、明確な姿ではないにせよ、垣間見れる点に留意が必要であろう。

 

さてさて。。。

 

終末思想には、オカルト的誘惑がちりばめられている。

だからこそ、冷静な眼で眺めてはいけないのである。

 

オカルト大好きっ子になって、わ~いと歓喜の声を上げながら、ワクワクしながら舐めるように読むのが、正しい読書方法。

いつまでもワクワク感が止まらない、それが宗教書を読む秘訣なのである。